補聴器にはトレーニングが必要です|上手に使いこなすコツと心構えをご紹介

2021年6月2日水曜日

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当コラムは1982年創業、補聴器を販売して25年以上のインペリアル・エンタープライズ株式会社によるものです。初めて補聴器を購入される方・ご検討される方向けに、補聴器関連情報を分かりやすくお伝えいたします。

補聴器にはトレーニングが必要です



  • 補聴器を着けるとうるさい
  • 雑音ばかりで煩わしい!
  • 思った以上に不快だった


せっかく補聴器を購入したのに、こうした理由で補聴器を使わない人がかなり多いようです。なかには、何度も補聴器を買い替える→使うのをやめる、というのを繰り返している方も多いです。

補聴器を使って快適な生活をおくるにはトレーニングが必要です。

こちらの記事では補聴器を使う前に知ってもらいたい心構えや、上手にトレーニングするコツをご紹介します。



どんな補聴器でも、使い始めは「聞き取りづらく、不快」です

難聴なので聞き取りづらそうにしている画像


はじめて補聴器を着ける人には、絶対に知っておいて欲しいことがあります。


どんなに高額でどんなに性能のいい補聴器でも、使い始めは「聞き取りづらく不快」


ということです。
その理由をご説明いたします。


補聴器はメガネのようにすぐ使えるわけではない


補聴器を使ったことがない人は、補聴器を装着すると以前のように良く聞こえるものと期待しているかと思います。
しかし、どんな方でも使い始めの数カ月におこる「聞こえづらさ」を克服したのちに、聞こえやすさを感じているのです

難聴の人が補聴器を使うと、どのように聞こえるのでしょうか。それは、


「雑音」だらけの世界です。


補聴器は音を増幅する機能を持つ医療機器ですが、周囲の音すべてを増幅します。

代表的な不快音は、

  • 新聞をめくる音
  • こもったような音
  • 食器類がガチャガチャいう音
  • エアコンや換気扇などの環境音や生活音


難聴のため聞こえにくさを感じていた人が、補聴器を着けた途端にすべての音が聞こえるようになります。
すると、会話以外の音がとても煩わしく感じてしまいます。

人によっては、補聴器の装着をやめてしまうほどです。


難聴を放っておくと認知症リスクが高まる可能性


ちょっと待って!のイラスト


でもちょっと待ってください!


補聴器を使わずにいると、難聴が深刻化して、認知症発症のリスクを高めてしまう可能性があります。

厚生労働省が2015年に策定した『認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)』において、認知症の危険因子のひとつに難聴が挙げられています。

加齢、遺伝性のもの、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷、難聴等が認知症の危険因子とされている。

引用:厚生労働省 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)


難聴になると必ず認知症になるわけではありませんが、難聴によるコミュニケーションの低下や社会との関わりが減ると、認知機能に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

また、2020年に発表されたランセット委員会のレポートではこう言及されています。


・難聴は、認知刺激の低下を通じて認知機能の低下につながる可能性
・認知症の約35%は予防・対策可能だが、難聴はその中でも最大の因子
・補聴器を使用すると、難聴による過剰なリスクが軽減される可能性

参考:Livingston G, et al. "Dementia prevention, intervention, and care" Lancet (2017)


「聞こえが悪いのは我慢すればいい」
「もう少し悪くなってから補聴器を使えばいい」

そうやって難聴を放っておくことが、認知症の発症リスクを高めるのです。

これは、とても危険なことです。


補聴器が聞き取りづらい理由は脳のせい




正常な聞こえの脳と難聴の脳の違い



補聴器が聞き取りづらい原因は、実は脳にあります。

正常な聞こえであれば、耳から伝わる音の刺激で脳は常に働いている状態です。
一方、難聴の脳は、伝わる音の量がとても少ないので、脳の働きがとても鈍い状態です。

正常な聞こえと難聴が脳に及ぼす影響の違いをあらわすイラスト。
正常な脳には音の刺激がたくさんあり、脳は常に働いています。一方、難聴の脳は音の刺激が少ないので、脳の働きがとても鈍くなっています。


常に働いている脳は、効率よく働けるように、必要である音と必要でない音を無意識に取捨選択しています。

これを「カクテルパーティー効果」と呼びます。

カクテルパーティー効果

たくさんの人がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味のある人の会話、自分の名前などは、自然と聞き取ることができる。このように、人間は音を処理して必要な情報だけを再構築していると考えられる。~(中略)~また、聞こえた音の中でも、都合のよい音が、脳に伝達されると、考えられる。

引用:ウィキペディア


つまり、脳は不要な音は意識しないよう、調整しているのです。


難聴になった脳が補聴器を使うと


一方、難聴の脳の場合、働きがとても鈍いため、本来できるはずの音を取捨選択する働きも鈍くなっています。
つまり、「カクテルパーティー効果」が効きにくい状態です。

そんな状況で補聴器を使うと、とにかく聞こえる音はすべて拾います。

結果、正常な聞こえのときには意識していなっかった音が、補聴器を使うようになってたくさん聞こえてくる。

これが「雑音」の原因です。

カクテルパーティー効果が発揮されている場合と、発揮されていない場合を比較したイラスト。
カクテルパーティー効果が発揮されていると必要な音を取捨選択することができます。一方、カクテルパーティー効果が発揮されていない状態で補聴器を使うと、周りの音をすべて拾ってしまうので、「雑音」として騒がしく、聴きたい音が「聞き取りづらく、不快」に感じます。


では、この状態はずっと続くのでしょうか。


脳を変えるトレーニングで補聴器が快適に




答えは「ノー」です。


働きが鈍っていた脳は、補聴器によって音の刺激が増えると常に働くようになります。すると、少しずつ音の取捨選択ができるようになります。

これが「補聴器を使ったトレーニング」です。

トレーニングといっても身構える必要はありません。

基本的に補聴器を装着して、(しばらくは雑音には我慢しながら)音を聞く。
ただ、それだけです。


慣れなくてもすぐに諦めないことが大切


ただし、トレーニングを行う際の注意点が2つあります。

  1. 毎日補聴器を着けること
  2. 装着する時間を少しずつ延ばすこと

これさえ守ればおよそ1~3カ月後、「雑音」は気にならなくなり(または、徐々に改善されて)、快適な補聴器ライフを楽しんでいることでしょう。



補聴器の聞こえに慣れるトレーニング




こちらでは補聴器を使ったトレーニングのコツや注意点をご紹介します。
トレーニングは3つのステップに分かれていますが、慣れてきたらどんどん次のステップに進んでもらって構いません。


最初のトレーニング



補聴器の使い始めは、主に2つのトレーニングが大切になってきます。


ひとつは、補聴器の操作やメンテナンスに関するトレーニングです。
もうひとつは、補聴器の聞こえに慣れるトレーニングです。


目安となる期間は1週間程度です。


補聴器の扱いに慣れる



補聴器をメンテナンス(掃除)している画像

まずは、補聴器のメンテナンスや電池交換、音量調節に関するトレーニングです。

補聴器の耐用年数は5年が目安となっていますが、なるべく長く使えるよう大切に扱ってください。
また、補聴器はとても小さな機器です。音量調節や電池交換を自在に扱えるようにしてください。

  • 使用後は汚れや耳垢、湿気などを拭き取る
  • 紛失しやすいので、使わないときは必ず決めた場所に収納する
  • 湿気に弱いので収納場所はなるべく除湿する(乾燥材などを活用)
  • 音量調節が自在にできるようにする
  • 電池交換や充電をできるようにする


少しずつ装用時間を延ばす




時間がどんどん長くなっているイラスト


補聴器の装着時間を毎日少しずつ延ばしていきましょう。
使い始めは数十分からの装着で構いません。(理想は数時間)

それからだんだんと装着時間を延ばしていってください。
最終的には起きてから寝るまで装着できるようにします。


毎日補聴器を着ける




カレンダーで毎日をあらわしているイラスト

補聴器は毎日着けるようにしてください。
休み休みで使うと、脳が音の取捨選択をできるようになるのに時間がかかります。

はじめのうちは「不快」であっても我慢して毎日装着するようにしてください。

そして、テレビの音、ラジオの音、携帯電話が鳴る音、家電製品の音、家族の会話など、なるべくいろんな音を聞いてください。


慣れてきてからのトレーニング



「最初のトレーニング」に慣れてきたら、次のトレーニングを開始してください。

目安となる期間は1~2週間程度です。


街に出ていろんな音を聞く


外出して買い物を楽しんでいる男女のイメージ画像


補聴器を着けて外出してみてください。

  • 電車やバスでのアナウンスは聞こえますか?
  • 店員さんとのやり取りは問題なくできますか?
  • 後ろから来る車の音に気付きますか?
  • ざわついた環境でお話しできますか?

家の中と違い、外では騒がしい場所もあります。
静かな環境ではないので、家の中よりも当然聞こえづらくなります。

外でも良く聞こえるように、自分に合った音量に調節してください。


新聞や雑誌を音読する


家で雑誌を読んでいる女性の画像


自分の声はこもったように聞こえているはずです。
補聴器の構造上、これは仕方のないことです。

こうした場合は慣れてしまう方が早いので、新聞や雑誌を音読する自分の声に聞き慣れてください。

聞き慣れることで、違和感がなくなるはずです。


少しだけ音量を上げる


音量調節部分を触り、ボリュームを上げている女性のイメージ画像


慣れてきたら少しだけ音量を上げましょう。

ただし小さすぎず、大きすぎず、ほんの少し大きめの音量が目安です。

様々な場所で音を聞いているはずですから、どのくらいの音量が聞きやすいか、それとなく分かるはずです。

その聞きやすい音量からほんのわずか、大きめの音量にセッティングしてみましょう。
※体調や気圧の変化によって聞こえ具合は変わるので、こまめな音量調整は毎日欠かさず行いますしょう。


仕上げのトレーニング



最後は「仕上げのトレーニング」です。

目安となる期間は1~2カ月程度です。


電話に挑戦する


家の固定電話を使って家族と会話をしている女性の画像


補聴器を着けながらの電話は初心者には非常に難しいですが、ご家族に協力してもらいながら聞き取りができるようにしましょう。

耳あな型、耳かけ型、ポケット型で聞き取り方のコツが変わります。
耳に当てる受話器の位置を変えながら、最適な場所を探してみましょう。

耳で聞くよりも、補聴器のマイクに受話器を近づけるイメージです。


積極的に会話する



親子3代でソファにくつろぎながら会話を楽しんでいる画像


せっかく補聴器を着けたのですから、会話を楽しむようにしましょう。

会話というのは声が弾んだり、話のスピードが変わったりと、聞き取りが大変です。
相手の話が分かるように、声のする方に顔を向けるなどして、意識的に聞き取りやすくしましょう。


トレーニング期間から楽しい補聴器ライフへ



「仕上げのトレーニング」は明確な終わりがありませんが、補聴器を着けてもそれほど苦労しなくなったら終わりと思って構いません。

これからも、毎日補聴器を使って積極的に外出したり、会話をしたり、人生を大いに楽しんでください。
段階 トレーニング内容
最初
(1週間程度)
補聴器の扱いに慣れる(メンテナンス・電池交換・音量調節)
少しずつ装着時間を延ばす
毎日補聴器を着ける
慣れてきたら 街に出ていろんな音を聞く
音読して自分の声に慣れる
少しだけ音量を上げる
仕上げ
(1~2カ月程度)
電話に挑戦する
積極的に会話する



補聴器はなるべく早いうちに使い始めを




補聴器を使う前に知ってもらいたい心構えや、上手に使いこなすコツについてご理解いただけたでしょうか。

補聴器はなるべく若いうち、そして、難聴度合いが低いうちに使い始めた方が、同じ聴力でも良く聞こえる傾向にあります。


「難聴が認知症のリスク要因」ということはまだまだ世間に浸透していません。
でもその事実を知った皆様には、聞こえの悪さを感じたら、まずはお近くの耳鼻科(補聴器外来)で受診してください。

補聴器相談医名簿 http://www.jibika.or.jp/members/nintei/hochouki/hochouki.html
出典:一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会



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